火の国の城で丹波大介と共に甲賀忍者の心意気を貫いて加藤清正の下で働いた、「杉谷のお婆」こと於蝶の若い頃のお話でござる。情が深く忍び仕事の為ばかりでなく男を抱く、情の深い於蝶であるがため、抱かれた男達は於蝶のため、命がけで動いてくれるのであった。死ぬ者もいたし、たくましい男と成長したものもいる。拙者も抱かれてみたかった(笑)
唯一心底惚れていた頭領の弟の杉谷膳寿坊とだけ結ばれることなく膳寿坊は信長の手に落ちる・・・以後於蝶が、信長の命を狙い続ける理由の一つでもある。それはまた、「蝶の戦記」の次の作品「忍びの風」でも触れることでござろう。
この小説でも、失いつつある甲賀忍者(武士)の心意気を貫き通すために、損を承知の上で苦労の多い道を選ぶ、頭領杉谷信正とそれに従う杉谷の忍達、その姿は上杉謙信や浅井長政にもオーバーラップしてゆく、そして味方してゆくのでござる。そしてそれが忍が誕生してからと言うもの、損得で動かず信ずる者(者)のために働いてきた忍の真なる姿なのでござる。
忍者を忍術や妖術、常人でない動き等の表現で表すのでなく諜報・護衛・武術?などのプロとして表現しているところがまた、この池波小説の特徴でござる。それにしても、「ねずみのおばば」こと70歳を超えた女忍びの伊佐木が怖い(笑)
が、後年の於蝶を思い浮かばせる・・・
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